研究成果

「中西・益永・中井研究室」の研究成果には、環境問題を新しい視点から捉えたものが多数あります。幾つかは常識をうち破り、環境政策にも影響を与えました。

日本のダイオキシン汚染の原因の一つとして過去に使われた農薬の重要性を発見

 一般に日本のダイオキシン汚染の原因は廃棄物の焼却が主要な原因とされ、政府の対策も廃棄物焼却やその他の工業焼却プロセスが対象となってきた。しかし、現在の汚染は過去の農薬使用による寄与がかなり大きいことを東京湾や霞ヶ浦の底質の分析から初めて定量的に明らかにした。

関連発表:

Shigeki Masunaga: Sources and Behavior of Dioxins in Japan, Proceedings of the 1st International Workshop on Risk Evaluation and Management of Chemicals, Yokohama (1998.1.22)

益永茂樹、桜井健郎、中西準子:東京湾と霞ヶ浦流域におけるダイオキシン類の収支、横浜国立大学環境科学研究センター紀要 , [1] 1-10 (1998)

関連報道:

「東京湾海底のダイオキシン」 横浜国大調査 朝日新聞 第1面(1998.2.3

 「河川・海のダイオキシン 流れ込む農薬に含有 水田土壌対策を急ぐ時」 朝日新聞 第4面(1998.11.11

 

日本の古い農薬中のダイオキシン濃度を測定:CNPに毒性ダイオキシンが含まれることを初めて明らかにした

 ペンタクロロフェノール(PCP)などの薬剤(日本では除草剤として、世界的には木材保存剤として使われた)にダイオキシンが含まれていたことは世界の研究で報告されている。しかし、日本のPCPのダイオキシン含量の報告は皆無である。また、同様に水田除草剤として用いられた農薬クロロニトロフェン(CNP)には1368-TCDDなどの毒性の低いダイオキシンが高濃度で含まれることが知られていたが、合成プロセスからして、毒性のあるダイオキシンは含まれていないと信じられてきた。当研究室では、19601970年代に大量に使われたこれら農薬を農家の納屋から探し出して分析した。その結果、これら日本の農薬にも比較的高濃度の毒性ダイオキシンを含まれていたことを初めて明らかにした。この結果は、生産企業や農水省からの当初否定されたが、最終的に当研究室の発表が正しいことを両者が認めることとなった。現在、農水省は農薬中のダイオキシン類含有基準を検討中。

関連発表:

Shigeki Masunaga: Toward a time trend analysis of dioxin emission and exposure, Proceeding of the 2nd International Workshop on Risk Evaluation and Management of Chemicals, pp. 1-10, Yokohama (1999.1.28)

関連報道:

「除草剤「CNP」に毒性ダイオキシン」 7080年代製品から検出 横国大教授調査 朝日新聞 夕刊 第1面(1999.1.27

 「除草剤のダイオキシン 国の徹底調査望む声」 読売新聞(1999.7.9

 

日本のダイオキシン類環境放出量の変遷を推定

 既存のデータを利用して、日本おける農薬や廃棄物焼却由来のダイオキシン放出量の過去の年次変遷を推定した。19601970年代において、農薬使用からの放出量が年間20kgTEQ/年にも上ったと見積もられ、焼却由来に比べて大きいと推定された。

関連発表:

Shigeki Masunaga: Toward a time trend analysis of dioxin emission and exposure, Proceeding of the 2nd International Workshop on Risk Evaluation and Management of Chemicals, pp. 1-10, Yokohama (1999.1.28)

関連報道: 報道や単行本で多数引用されている。

 

日本におけるダイオキシン環境汚染の変遷を実証的に解明

 宍道湖や東京湾の底質コア(柱状に採取した堆積物)の分析から、日本のダイオキシン環境汚染が1970年代前半に最大に達していたことを明らかにした。また、汚染の原因の内、主要な3つ(PCPCNP、燃焼)の寄与の変遷も明らかにした。

関連発表:

Shigeki Masunaga, Yuan Yao, Isamu Ogura, Satoshi Nakai, Yutaka Kanai, Masumi Yamamuro, Junko Nakanishi: Historical Contribution of Different Sources to Environmental Dioxin Pollution Estimated from the Lake Shinji Sediment Core, Organohalogen Compounds 43, 383-386 (1999.9)  

 

水系に存在する内分泌かく乱物質としてヒト由来のホルモン物質が無視できないことを報告

 内分泌かく乱化学物質として合成化学物質が注目されているが、ヒト由来のホルモン物質は活性が高い点でむしできない。今回、ヒトの女性ホルモンであるエストロンが河川水に存在することを明らかにした。

関連発表:

板澤勉、益永茂樹、古市琢磨、中西準子、D. L. Villeneuve, K. Kannan, J. P. Giesy: 多摩川における女性ホルモン活性、環境科学会1999年会, p.110-111, 豊橋(1999.11.1012

Shigeki Masunaga, Tsutomu Itazawa, Takuma Furuichi, Sunardi, Dan Villeneuve, K. Kannan, John P. Giesy, Junko Nakanishi: Occurrence of Estrogenic Activity and Estrogenic Compounds in the Tama River, Japan, Environmental Sciences, 7[2] 101-117 (2000.7)  

関連報道:

 「コイの生殖異常原因に新顔? 女性ホルモンのエストロン 多摩川の水の調査で判明 フェノール類より強い作用 横浜国大グループ」 毎日新聞(1999.12.17

 

日本におけるコプラナーPCB汚染の原因を推定

 コプラナーPCBは狭義のダイオキシン類と同様な毒性を有し、現在ではダイオキシン類の仲間として扱われている。日本人のダイオキシン類の摂取量(毒性ベース)の半分以上がコプラナーPCBに由来しており、狭義のダイオキシンよりコプラナーPCB対策が急務である。現在水系に堆積している底質の分析結果の解析から、コプラナーPCB汚染は過去に生産・使用されたPCB製品の環境漏洩と燃焼等で生成したコプラナーPCBの両方がほぼ同程度ずつ寄与していると推定された。

関連発表:

Shigeki Masunaga: Comprehensive analysis of dioxin and co-PCB behaviors in Lake Shinji Basin Proc. of Third International Workshop on Risk Evaluation and Management of Chemicals, pp. 80-93, Yokohama (2000.1.28)

関連報道:

 「毒性強いダイオキシン類の発生源の半分 禁止のPCB 紛失?漏出?後絶たず 横浜国大教授ら研究」 朝日新聞(2000.1.29 12版:朝刊1面、解説3面,13版:3面)